校長室單位資料
【台北・福岡静哉】戦渦に巻き込まれ、台湾の女学校を卒業できないまま日本に帰国した納所(のうしょ)美代子さん(86)=兵庫県芦屋市=が3日、台北市の母校で、71年越しの卒業証書を受け取った。納所さんは「第二の古里・台湾で受け取ったこの卒業証書は一生の宝物です」と涙を流して喜んだ。
納所さんは日本統治時代の台湾で生まれ育ち、戦後、日本に引き揚げた「湾生(わんせい)」。台北市の静修女学校に入学し、学業に励んだ。だが、米軍による空襲など戦況が悪化して通学できなくなり、卒業がかなわないまま、終戦後の1946年3月、帰国を余儀なくされた。引き揚げ後は病気がちだったこともあり、一度も台湾を訪れたことはなかった。
母校を再訪したいとの思いを納所さんから聞いた主治医の池永弘二さん(60)が、静修女学校の後身、天主教静修女子高級中学に連絡したところ、希望が受け入れられ、実現した。
納所さんは3日、池永さんらに付き添われ、71年ぶりの訪問を果たした。戦前の面影が残る校舎を見て回りながら「懐かしい」と涙を流した。学校側が特別に卒業証書を作り、納所さんに授与。納所さんは「もう台湾には来られないと思っていました。感謝と感激で言葉もありません」と話していた。